2010-09-01から1ヶ月間の記事一覧
改めて言うまでもなく、永井荷風の代表作だろう。 簡単に纏めるならば、主人公の作家が小説の構想を練るために、玉の井界隈を徘徊し、運命的な女性に出会うのだが、そこには恋愛の物語が成就しない、というより主人公が成就させない。 彼女が主人公にとって…
吉田健一は吉田茂・元首相の長男で、英文学者、評論家、小説家であると共に、美食家としても知られる、といった情報は改めて言うことでもないので、もうやめておこう。 この本に収められた「金沢」という中篇を最初に読んだときは、まずその語り口の虜になっ…
主人公の蕗子さんが、亡き父の遺品を整理しながら、古ぼけたノートを見つける。 そこへ「めぐらし屋」宛ての電話がかかってくる。 といった感じで物語が始まる。 物語の粗筋を書いてしまって、何か判った気になるのはやめようと思う。 この物語のキーワード…
この本もまた図書館で借りた本である。 1968年という年がどういう年であったのか、それはその時を生きた人間が語るべき事柄であり、そこに居なかった人間が何をか語っても、行ったことのない土地の旅行記のようなものではないだろうか。 著者は1968年には高…