この本もまた図書館で借りた本である。
1968年という年がどういう年であったのか、それはその時を生きた人間が語るべき事柄であり、そこに居なかった人間が何をか語っても、行ったことのない土地の旅行記のようなものではないだろうか。
著者は1968年には高校生であり、その日々が綴られる。
だが、四方田犬彦のエッセイは、様々な深度で語られてゆくのが特色だと思うのだが、この本もまた、ただの思い出話というだけではない。
高校生の学生運動と挫折、しかもそれは観念の魔物に魅入られる距離からは少し離れて、そして高校生であるが故の子供っぽさが透けて見える。
本文にも出てくるが、村上龍の「69」をふと思い出した。
政治闘争の高まりと近づきつつある閉塞感は、実感としては判らないが、この本からそれが伝わってくる。
高校生の頃の意味もない焦燥感やくだらなさ、それはこの本を読んで思い出した。
そして、自分の年齢を思い出し愕然とする。

- 作者: 四方田犬彦
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2008/03/28
- メディア: 文庫
- 購入: 8人 クリック: 39回
- この商品を含むブログ (57件) を見る