雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

サド侯爵の生涯/澁澤龍彦

この本を読んだのは、高校生ぐらいだったろうか。
当時どう思ったのかは、もう覚えていない。
だが、こうして未だに手元に残してあるということは、やはり感銘を受けたのだと思う。
表題の通り、サドの評伝である。
澁澤龍彦はサドの何を評価しているのか。
ひとつはフランス革命前夜のリベルタンとしてだろう。
もうひとつは、ダンディズムの体現者としてなのではないかと思った。
性的放縦からのスキャンダルにおいても、釈放後の老後の姿においても、そこにダンディズムを見出しているように思った。
だから、この本は10代の少年にこそ読まれるべき本なのだろう。
男としての振る舞いという点においては、池波正太郎のような江戸趣味でも構わないが、いっそサド的ダンディズムを身に纏ってみてはどうだろうか。
そして、この本は澁澤龍彦自身がそれに憧れていることの表明なのだろう。
サドを単なる性的異常者という呪縛から解き放ち、啓蒙思想の先駆けであるリベルタンとして評価し直す一方、フランス貴族的ダンディズムを紹介するという本なのだと思った。


サド侯爵の生涯 (中公文庫)

サド侯爵の生涯 (中公文庫)