久しぶりに坂口安吾を読み返してみた。
なんとは無しに、角川文庫版である。
最初期の「木枯しの酒蔵から」「風博士」そして、「二流の人」「白痴」「青鬼の褌を洗う女」あたりが収められている。
坂口安吾の小説世界は、何だか危ういようでもあり、かなり硬質な手触りもする。
人が人であるとはどういうことなのか、という根源を探るような話だと思っている。
「二流の人」では、黒田如水を軸に豊臣秀吉、徳川家康らの戦国末期の人物像を描いている。
だが誰にも肩入れせず、バッサリと「二流の人」と切り捨てている。
この世で天下を取るという野望を抱き、それに動かされて策略を巡らし、裏切り、出し抜くのは二流の人間のやることなのだろう。
一流とはなにか。
「紫大納言」に描かれる美に取り憑かれて、自らまでもを捧げること、「白痴」で描かれる空襲の中を逃げ惑い、死を覚悟する瞬間でも人であることを忘れないこと、そういう考えのように思う。
コンパクトな短篇集ながら、読み応えは重い。
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