雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

白痴・二流の人/坂口安吾

久しぶりに坂口安吾を読み返してみた。

なんとは無しに、角川文庫版である。

最初期の「木枯しの酒蔵から」「風博士」そして、「二流の人」「白痴」「青鬼の褌を洗う女」あたりが収められている。

坂口安吾の小説世界は、何だか危ういようでもあり、かなり硬質な手触りもする。

人が人であるとはどういうことなのか、という根源を探るような話だと思っている。

「二流の人」では、黒田如水を軸に豊臣秀吉徳川家康らの戦国末期の人物像を描いている。

だが誰にも肩入れせず、バッサリと「二流の人」と切り捨てている。

この世で天下を取るという野望を抱き、それに動かされて策略を巡らし、裏切り、出し抜くのは二流の人間のやることなのだろう。

一流とはなにか。

「紫大納言」に描かれる美に取り憑かれて、自らまでもを捧げること、「白痴」で描かれる空襲の中を逃げ惑い、死を覚悟する瞬間でも人であることを忘れないこと、そういう考えのように思う。

コンパクトな短篇集ながら、読み応えは重い。