中学生の頃に買ってもらった本である。
その買ってもらった本は、いつだったか処分してしまったので、改めて買い直した。
タイトルの通り、「物理学」が成立する過程をたどっていく。
ケプラー、ガリレオ、ニュートンという天動説から地動説への転換、そして万有引力の発見の流れの中で、止まっているものは止まり続け、動くものは動き続ける、万物の運動の原理が発見される過程である。
そしてもう一つは、技術と科学の関係から、熱力学、エントロピーの概念を解きほぐしている。
物理学とは現実世界の現象を数学的な記述で説明することであるという説明がされる。
下巻は、近代の原子論の辺りの解説で、マックスウェル、ボルツマン、マッハなどが登場する。
熱力学から原子論へ至る解説なのだけれど、恐らく物理学科の学生向けの解説も多く、最低でも高校数学が理解できていないと、なかなか分かり辛いものがある。
以前読んだときの記憶は無いのだけれど、この本は未完だった。
代わりに、「科学と文明」という講演を収めている。
科学の発達が不幸な方向へと進むことへの考察が、ある種の文明論として語られる。
世界情勢に対する考察は、読み手である私がいちおう大学まで通ったからなのか、書かれたのが50年以上前だからなのか、いささか浅いように思った。
とはいえ、これが当時の平均的もしくは知識人としての認識のレベルだったのだろうか。
もしかすると、理系の限界を当時の自分は感じ取ったのかもしれない、と思った。