何とも不思議な小説だ。
いまさら、糸井重里について、説明する必要も無いだろう。
だが、この小説は何だろうか。
何かが足りないのではない。
何か余分な気はする。
家族の、それぞれが抱える、秘密というにはささやかな秘密が、描かれる。
それらが白日の下に晒され、てんやわんやのホームドラマが展開するわけではない。
秘密は秘密のままに。
展開するとしたら、長男の連れてきた「ヒマラヤ不動産」の社長が、何故か同居するようになり、怪しげな宗教を始める。
しかしそれで社会と家族が対立して、というドラマが生まれるわけでもない。
そして唐突に家族旅行に出かけ、物語は終焉を迎える。
何かを声高に主張しているわけではないが、核心のすぐ傍で回避しているような気がする。
それは、何かを指し示すことで生まれる政治的なもの、真実という名の絶対主義を避けるための戦略ではないだろうか。
無駄に語り、核心を明かさない。
そんな感じがする。
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