真夜中に目が覚めてしまい、のどが渇いていたので、台所で水を飲み、そのまま何とはなしにリビングでテレビをつけると、この「包帯クラブ」の映画をやっていた。
あまり興味も無く、ただ眺めているうちに、主人公たち(柳楽優弥、石原さとみ、田中圭、貫地谷しほり)の初々しく、切ない演技と、ロケに使われた高崎の街の美しさに引き込まれて、結局、最後まで見てしまい、翌日の勤務時間は眠かった。
その映画の原作となった小説が、この本である。
天童荒太氏の作品を読むのは、これが初めてだ。
ちくまプリマー新書ということは、10代向けなのかもしれない。
映画の印象で小説を読んでしまうと、ちょっとした違和感を覚えてしまう。
小説の中の主人公達の動きに、現実の俳優のイメージが被ってしまう。
それを追い払いながら読んだのだけれど、これはやはり少年少女向けの小説だった。
傷つくこと、それに共感すること、それがテーマであり、全てだと言っても良いかもしれない。
それの何が悪い、ということではなく、歳をくったおじ様おば様達には物足りない印象になるだろう。
些細なことで傷つき、些細な共感で回復する、その機微な揺れ動きは、少年少女ならではの特権ではないかと思う。
だから、時々差し込まれる後日談めいた頁は、作者の照れ隠しの様な気がする。
包帯クラブ The Bandage Club (ちくまプリマー新書)
- 作者: 天童荒太
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