雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

うわさのベーコン/猫田道子

たぶん、はてなに引っ越してくる前から、この本の噂は聞いていた。
聞いてはいたが、特に読もうとも思わなかった。
ふと何気なく、検索してみたら図書館にあったので、借りてみた。
だがこの物語について、何かを語るべきだろうか。
いや、そもそも物語でも詩でもないような気がする。
だったらそれは何なのか。
差し当たっては、作品と呼んでおく事にしよう。
この作品における誤字、脱字、ルビを混入させるという演出は、ストーリーを語って、少しだけ感想が添えられる文体と、構造として似ている。
本来的と思っているであろうことに対して、少しずらした何かを添える。
いやそうではない。
ただ語っている、何かを伝えるためではなく語るから、そうなるのではないか。
つまり、子供が
「もっと整理してからしゃべりなさい」
と言われる状態の言語感覚ではないだろうか。
ただ言葉を紡いで、そのまま放り出してしまうような。
だが、誤字やルビには明らかな意図を感じる。
だから、そのまま放り出したかのように見えるよう、演出が施されているのだ。
表題作の「うわさのベーコン」は、亡くなった兄の形見のフルートと、誰かとの結婚のことを記述しているが、それは何も説明などしていない。
それを巡って事件などおきない。
結婚したいと繰り返されるが、その結婚は何も意味していない。
何も意味しないよう話ははぐらかされ、進んでいるのか進んでいないのか、ただ時が流れたような記述もあるが、話の発端からさほど遠いところには行っていない。
そう思うと、やはり物語でもなく、詩でもなく、ただの創作と呼ぶのがふさわしい気がする。

うわさのベーコン

うわさのベーコン