初めて読んだ三島由紀夫は、澁澤龍彦の日本文学アンソロジー「暗黒のメルヘン」に収められていた「仲間」だったかと思う。
恐らく高校生の頃だろうか。
あの頃は三島由紀夫は学校では教えていなかったっけ。
近代文学までがせいぜいで、現代文学は扱いきれなかったんだろうと思う。
今ではどうなのだろう。
自衛隊市谷駐屯地で割腹自殺をしたのが1970年。
この本は昭和43年から44年に書かれたり、対談をしたものらしいので、最晩年のものだといえよう。
とは言え、享年45歳なので、晩年とはいえ40代の文章だ。
(それはそうと、自分は三島由紀夫よりも長生きをしてしまったのか)
この本で書かれている主張はシンプルなのだが、時代背景が頭に入っていないと、ちょっと何の話だかと思うかもしれない。
しかし、そうでなくても「お茶漬けナショナリズム」「東大を動物園にしろ」といったエッセイは、非常に判り易い。
やはり、三島由紀夫はポップなのだ。
一見するとナショナリストっぽいように見えるが、ナショナリストのフェイクであり、もうそこには無い失われた伝統への回帰を不可能であることを知りながらに信じている。
しかしながら、ナショナリストを「日本は大したもんだ派」と「日本はまだ貧しい派」の「お茶漬けナショナリスト」と言い切り、左翼系の言説にはテロリズムを引き込む観念の真空の潜在を見抜く慧眼を持ち、バタイユ的な祝祭の王としての天皇を祀り上げるという姿はナショナリストのフェイクだと思うのだ。
その姿は、不可能を不可能であると知りつつも信じるという、大文字のセカイ無き後の存在として、ポップであると言わざるを得ない。
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