持っているのは、新潮文庫版と角川文庫版。
読み返したのは田中美知太郎訳の新潮文庫。
ボールペンで傍線が引かれていて、今更ながらに、古本で買っていた事に気づいた。
たぶん高校生の頃に買ったのだろう。
ソクラテスが何を弁明し、何を主張したのか。
この本であればプラトン自身の考えは凡そ入り込みにくいのではないかと考えた。
もし、その想定通りであれば、ソクラテスという人物の主張によれば
・有名人を狙って議論を仕掛けに行った
・誰もが馬脚を顕した
・見物客は有名人がこき下ろされるのを喜んでいた
・神の教えに従っただけである
・報酬はもらわない
・国家社会の要職に就くつもりは無い
ということだが、これは弁明なのだろうか。
職業としての弁論家ではなく、ただ彼が信じるところの「神」に従って議論を仕掛けた事になっている。
彼の信じる神と、アテナイ人たちが信仰している神は、同じ神なのだろうか。
神の教えに従い、社会の中の富裕層を狙い撃ちにして議論をふっかけるが、そもそも報酬目当てではない。
真実を見つけるまでと言うが、議論相手が根絶するまで活動は継続するつもり、のようにも見える。
アテナイの国家にとってソクラテスの活動は、政治的にも経済的にも枠組みから外れているばかりか、現秩序の破壊者として活動しているようにも見える。
実際、告訴した人々への呪いの言葉だって吐いている。
価値を共有しえない人物は、社会、経済から抹殺されると言うのが、この本の主題なのではないだろうか?