足利義満について知っていることと言えば、金閣寺を創建した室町幕府の将軍、というぐらいだった。
そんな自分でも、今谷明「室町の王権」を読んだ時は驚いた。
鎌倉幕府と大名たちが活躍する戦国時代の狭間にある室町幕府は、ちょっと地味な印象だし、南北朝期辺りにフォーカスを当てる網野善彦の民衆文化史からも、逆に中央政権の動きには光があまり当てられてなかったと思う。
そんな前置きはともかく、この本は東アジアの国際情勢の中で、足利義満が行ったことの意味を推測する、そんな本である。
「室町の王権」がつぶさに足利義満の意図を探るのに対し、それは何故?を問い、同時代の中国、朝鮮の動きと並べ、京都の公家、寺、幕府関係者における手続論を丁寧にトレースする。
すると、足利義満の王権簒奪計画とは、何を意図してしたのかが、朧げに浮かんでくる。
正直なところ、政治ドラマに殆ど興味が無いので、大河ドラマも観ない。
いや、ドラマそのものに興味が無くなっているので、「半沢直樹」シリーズも良く知らないけれど、京都の人間同士のどろどろとした権力争いと手続論は、現代の企業の中にもあるのかもしれない。
それともう一つ、皇国史観に対する見方も参考になった。
頼山陽の漢詩に今ひとつ興味を覚えない理由も何となく分かった気がする。(全詩集を持っているけれど、読み通せていない)
書いていることは、十分に知的に刺激的な内容なのだけれど、ふざけたような筆致に拒否反応を覚える人がいるかもしれないが、日本史の門外漢の自分にとっては、とても読みやすく思った。