雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

メキシコの夢/ル・クレジオ


哀しいゆめ

メキシコの夢

メキシコの夢


いつ買ったのかもう覚えていない。この本は哀しすぎるほどにリアルな感じがする。征服者の側、被征服者の側、それぞれが抱えている観念、幻想を『夢』という言葉で表している。それらは、いくつかの公文書からル・クレジオが想像力で広げたイメージの集積であり、だからこそリアルなのだろう。最後まで読み通すのは、なかなかしんどかった。異なる文化の衝突、死の概念、絶対的な他者への畏れ、…ここに描かれている残酷さは、そのまま他の時代の残酷さに繋がる。それは、ナチスであり、旧日本軍であり、今も続く民族紛争であり、かくも人間とは進歩しないものなのだろうか?