これも手放してしまった本だ。
サザエさんの家というのは、おそらく新聞で連載していた頃は、それなりに普遍なありふれたものだったのだろう。
それが高度成長期を経て、オイルショックを経て、バブルを通過することで、およそかけ離れたものになってしまったのだろうと思う。
そこにあったのはホームドラマの前提となる家族や家や会社といった概念なのだろうと思うが、前提が変容し梯子を外されたように取り残された磯野家は、奇妙な人々の奇矯な振る舞いにも思えてしまう。
それを改めて取り上げて見せたことでこの本は売れたのだろう。
それまで、サザエさんは床屋で見る、言わば暇つぶしのマンガの類だった気がしている。
その観点を覆して見せたのだ。
同じことがドラえもんにもあったような記憶がある。
ただこの手法は題材の良さに依存し、ワンパターンに陥ることは容易に想像がつくであろう。
結局、サザエさんは相も変わらず日曜の夕方に放映され続け、この本は忘れ去られてゆくのだろう。
- 作者: 東京サザエさん学会
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 1995/07
- メディア: 文庫
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