以前読んだことがある気がしていたのだけれど、実は初見かもしれない。
ねじめ正一氏を知ったのは、10代の頃だと思う。
当時は現代詩を読み漁っていたので、自然と辿り着いたと思う。
とはいえ、詩と小説は全く異なっている。
記憶の中の印象ではあるが、句読点もなく続く散文詩で、そこには不条理で不穏なイメージがあったと思い出す。
だが、この本の小説の世界は、こじんまりとほのぼのとしたホームドラマ的な世界である。
そして、昭和の頃の、微かに高度成長期の気配もする。
コインパーキングによって、虫喰い状になる前の、東京の路地裏の風景が描かれる。
だが、この本が書かれたのは、1986年であり、既に失われた風景だったのではないだろうか。
或いは、数少ない残された風景の面影が、高円寺にはあったのかもしれない。
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