雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

貧困旅行記/つげ義春

本のタイトルが、その内容を裏切らない。
鄙びた、といえば聞こえが良いが、この本に出てくるような宿屋に泊まってみたいとは思わない。
観光という種類の旅ではなく、日常からの逃避というのに近いようだ。
それまでの日常を捨てて、ひっそりと塵に埋もれるような、静寂と退屈の中へ身を潜めるような暮らしへと憧れているようだ。
一見、つげ義春氏自身の漫画の世界のようにも錯覚するが、聊かずれがある。
作品と作者は別なのだから、そのずれは当たり前で、むしろ体験を作品へと結実させるところに、作者の技量を感じる。
さらには、そのずれすらも、本来あるべきでないモノ、と思わせるのは、作者の好きな私小説の応用とでも言うべきだろう。


貧困旅行記 (新潮文庫)

貧困旅行記 (新潮文庫)