読んだのは、高校生だったろうか。
寺山修司による童話なのだけれど、全てがハッピーエンドではない。
むしろ、意地悪な苦味のある終わりが多い。
だが全般的に、これは少女趣味とでも言うべきものかもしれない。
少女趣味とは何であるかという定義を、これから展開するつもりも無いのだけれど、おそらく正反対のベクトルには、主人公のタフガイが善悪を超えた独自の倫理で行動するハードボイルド小説が位置する、と言ったらイメージは伝わるだろうか。
更に言えば、不惑の年齢の男が読んで、心酔しているとしたら、かなり気味の悪いジャンルだろう。
だが、この本を書いた寺山修司自身も、ほぼ同じ年頃だったようだ。
これはどういうことかと考える。
ひとつは、「売れる」ことを目的に書かれた作品ではないか、ということ。
つまり、思春期辺りの女性読者をマーケティング対象として意識していた、或いはそういった層を対象読者とする雑誌に発表されることを目的に書かれた作品なのではないか。
メルヘンだとか、ポエムだとか、そういったキーワードで代表されるような集団が、読者として想定されていたのかもしれない。
もうひとつは、微妙な差なのだけれど、少女趣味的なるものを偽装する作品ではないか、ということ。
俳句や短歌においては、母子家庭、革命、少年といったイメージを過剰なまで使用して、17文字または31文字の物語を作り上げていることを思い出さずにはいられない。
過剰なまでに少女趣味を偽装している、ひとつのパロディなのではないか、と。
いずれにしても、これは私が誰かに薦めるべき本ではないというのが、読み返しての結論である。
もし読みたければ、勝手に読むが良いだろう。
だが、それを誰かに薦めた途端に、そのセンスはあなたを代表するレッテルのひとつになることに気をつけるべきだろう。
(それは、どの本に関しても言える事なのだけれど)
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