雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

新編 東京繁昌記/木村荘八、尾崎秀樹編

何となく図書館で借りてみた。
筆者は永井荷風の「墨東綺譚」の挿絵で有名だそうだ。
綴られるのは、明治から昭和30年辺りの東京への回想なのだが、正直なところ、生まれていない頃の話なのでいまひとつ実感が湧かない。
河岸がコンクリートで固められる前の隅田川、掘割のあった頃の銀座、私娼窟、どれもが遠い昔の話に聞こえる。
しかし、隅田川が臭いという話が何度か出てくるが、これは朧気ながら私の記憶にもある。
たぶん昭和50年頃の事だろうか。
京成電車だったのか、総武線だったのか定かではないが、隅田川を越えるときには、嫌な匂いがした。
だが、曖昧な光景しか思い出せないことからすると、これは後から作られた記憶かもしれない、とも思う。
また、佃島についての記述も登場する。
歴史的な考察も踏まえつつ、将来的に高層ビルが建つこと、つまり、リバーシティ21を予見するような記述がある。
もっとも、そう思うのは実際に建築された今だから言えるのであって、予見でもなんでもない。
この本が書かれた昭和30年頃の佃というと、吉本隆明は既にこの土地を離れてしまい、四方田犬彦が月島に引っ越してくるには、まだ30年もある。
だから何だということでもない。
また、銀座についての考察も面白い。
いずれは、一流品を並べた店舗ばかりにすべきだ、というのは、恐らくこの年代や銀座好きな人々の共通認識なのかもしれない。


新編 東京繁昌記 (岩波文庫)

新編 東京繁昌記 (岩波文庫)