石川淳が朝日新聞に文芸時評を書いていたそうだ。
という驚きは、そう書いただけでは伝わらないだろう。
わかる人にはわかる類の話だと思うが、わかったからって別段何も変わりはしない。
そもそも、石川淳を知っている友人などいないのだから、石川淳という作家はマイナーなのかもしれない。
自分の周りだけで世界の全てがそうだと判断するのは危険なのだが、他に知りようもないし致し方ないような気もする。
それはともかく、マイナーだろうが何だろうが、石川淳は面白い。
江戸趣味と伝奇趣味とアナーキズムを混ぜて練り上げた餡子のようだ。
文章にテンポがあるからするっと読めてしまうのだけれど、ぴりっとくる毒を吐いたりする。
この本には昭和44年12月から昭和46年12月まで、朝日新聞の紙面を飾った文芸時評が収められている。
石川淳は反時代的なイメージがあったのだが、この本ではそんなことはないのだというのがわかった。
のっけの方から、ロラン・バルトの名前が登場したりする。
また、三島由紀夫に言及し、そのポップさに着目していたのには驚いた。
- 作者: 石川淳
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2010/08/10
- メディア: 文庫
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