この本もまた図書館で借りた。
元の書名は「田中角栄の遺言」だそうである。
実は小室直樹を読むのはこれが初めてである。
市井の学者と言われるのもなるほど頷ける。
非常に論理的であり、正面切った正論を紡ぐ論客であると思った。
日本が近代国家になりきれていない、その象徴的事件がロッキード裁判であり、その被告たる田中角栄こそが、近代政治を体現していたのだという主張である。
義務教育で習った三権分立について、その中身にまで覚えている方は少ないかもしれない。
そして、実際の社会の動きは、そうはなっていない。
学校の授業で習うのは理念であり仕組みであるが、それが現実にはどうなっているかを読み取るのは別の事だろう。
マスメディアで流されるニュース、およびその解説は、特定の考えに基づいていたり、考えすらなくスキャンダラスに垂れ流されているため、ノイズはさらに大きくなっているように思う。
この本での小室直樹による解説は、明確な根拠があり、シンプルな論理である。
民主主義(デモクラシー)とは何であるか、今の日本はどうなっているのかを考える手立てになると思う。