雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

三万年の死の教え―チベット『死者の書』の世界/中沢新一


遥か彼方を見つめると何かが見えるような気がする


副題にあるように、「チベット死者の書」について書かれている。
言うまでもなく、「死者の書」は人が死んでから、ニルヴァーナに至る過程に対する教えである。
それは目くるめく色彩と光の世界であるらしい。
NHKスペシャルでの「死者の書」特集のシナリオや、講演の内容を基にしているため、難解な内容が平易な言葉で書かれている。
だが、本当に「自分の死」を理解できているのかは、判らない。
自分の死を体験するのは一度きりであるし、集合的無意識とでも言うべき、ニルヴァーナの記憶は個人に属するものでもないし、それは永遠の謎であるような気がする。
だが、チベットにおいては、死に対する思索が連綿と深められ、このような経典となって残されているのは、非常に興味深いことだと思う。
来るべき「自分の死」を意識するだけでも、何かが得られたような気がする。