世界の果てのような景色/人々の息遣い
- 作者: 藤原新也
- 出版社/メーカー: 朝日新聞社
- 発売日: 1995/06
- メディア: 文庫
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この本は厚さ5センチぐらいあって、片手で持つのはなかなか苦労する。
タイトルの通り、チベットの旅行(放浪)記と言っても良いのだろう。
だが、チベットで藤原新也が何をしていたのか良く判らない。
何かを思って、写真を撮って、お茶をご馳走になり、それで?、と思ってしまう。
バブルの頃に有名になったインドの写真の話にも触れている。
人々が日常から追いやろうとしてしている死というものが、インドではありふれた日常の中に転がっていて、死体は犬に喰われている。
そのことをクローズアップすることで、アメリカ的なものに代表される、ポップカルチャー、あるいは閉塞感に対するアンチとして、何をか訴えようとしているのかもしれない。
しかし、チベットで藤原新也が思っていることは、チベットの人々とは関係が無い。
チベットだから思ったことなのだろうか?
藤原新也の文章は好きではない。
だが、写真は好きだ。
ここに収められた写真には、抜けるような青空と荒涼とした砂礫、わずかな緑が写っている。
人々の姿は埃っぽく、だが眼には力があり、息遣いが聞こえるようだ。
世界の果てのような景色と、人々の息遣いをポートレートとして切り取る写真家としての素晴らしさはあるのだ。