雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

博士の愛した数式/小川洋子


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博士の愛した数式 (新潮文庫)

博士の愛した数式 (新潮文庫)


だいぶ前に読んだのを引っ張り出して読む。
改めて言うことでもないが、この物語は「無いこと」の物語なのだと思う。
主人公の家政婦とその子供の家庭には、父親がいない。
博士には、80分前までの記憶しかない。
博士とその義姉は住まいをほぼ同じくしているのだが、家庭というものではない。
それらの欠落を埋めるような力が、物語の底にあるようだ。
それは、友愛、とでもいうありようなのかもしれない。
男女の愛情でも、親子の愛情でも、友情でも、ぴったりと重なりあわない、何か好ましい感情を、主人公の家政婦と博士が懐いていることが、中心にあるのではないだろうか?
そして、小道具は数学であり、江夏なのだという気がする。