田村隆一氏の名前を知ったのは、吉本隆明氏の本を読むようになって、「荒地グループ」と称される詩人たちの存在を知ってからだったように思う。
既にその頃は、田村隆一氏は老境の域に達していたと思う。
時折、詩誌で発表される詩は、諧謔とユーモアの中にぴりりと鋭い言葉の混じる、言うなれば「大人」の魅力を感じた。
この本は、初期の詩篇を中心に詩人の自選で編まれている。
それらの詩は、硬質な言葉たちが屹立しているようだ。
「死」とか「世界」とか、使われる単語そのもののイメージが硬質だから、というのではなく、その各行で言い放たれる言葉が、それぞれに読んでいるものを突き放そうとしているように思う。
やがて、後半に差し掛かっていくにつれ、もっと語り言葉に近くなり、一見、柔らかくなったようにも思える。
だが、芯には硬質の言葉が隠されていて、どこかではっとさせられる。
- 作者: 田村隆一,平出隆
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1997/04/10
- メディア: 文庫
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