雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

腐敗性物質/田村隆一

田村隆一氏の名前を知ったのは、吉本隆明氏の本を読むようになって、「荒地グループ」と称される詩人たちの存在を知ってからだったように思う。
既にその頃は、田村隆一氏は老境の域に達していたと思う。
時折、詩誌で発表される詩は、諧謔とユーモアの中にぴりりと鋭い言葉の混じる、言うなれば「大人」の魅力を感じた。
この本は、初期の詩篇を中心に詩人の自選で編まれている。
それらの詩は、硬質な言葉たちが屹立しているようだ。
「死」とか「世界」とか、使われる単語そのもののイメージが硬質だから、というのではなく、その各行で言い放たれる言葉が、それぞれに読んでいるものを突き放そうとしているように思う。
やがて、後半に差し掛かっていくにつれ、もっと語り言葉に近くなり、一見、柔らかくなったようにも思える。
だが、芯には硬質の言葉が隠されていて、どこかではっとさせられる。

腐敗性物質 (講談社文芸文庫)

腐敗性物質 (講談社文芸文庫)