雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

作家の誕生/猪瀬直樹

新書ながら読み応えのある一冊だった。
明治時代における雑誌の誕生から、文壇の形成、そしてタイトルの通り、「作家」という職業の確立を丹念に追っていく。
文学史でもなく、出版史でもなく、だが、それらを包括する、日本近代史の姿が見えてくる。
それはやはり、巻末に記された、圧巻の参考文献から紡ぎ出されたものなのだろう。
そして、もうひとつ、恐らく猪瀬氏の隠されたテーマなのだと思うが、「近代」の日本社会の権力構造に対する、批判のようなものが見えてくる。
明治時代に近代化し、第二次世界大戦の敗戦によって否定されたもの、何かが不可視の領域に温存され、蔓延しているもの、それを追及しているようにも見える。
うめくそれを読み込めているのか自信がないが、太宰治三島由紀夫についての言及の辺りでそれが見えてきたような気がした。


作家の誕生 (朝日新書48)

作家の誕生 (朝日新書48)