雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

再婚者・弓浦市/川端康成

表題作の「弓浦市」は、主人公の小説家のもとに、見知らぬ女性が訪れ、かつての弓浦市での思い出語りをする、という短篇である。

女性に見覚えもないうえ、弓浦市などという地名は存在しない、というなんとも薄気味の悪い話である。

この本に収められている短篇はどれも何だか薄気味が悪く、じめじめとした話ばかりだと思った。

明らかな幽霊譚である「無言」も、亡くした夫の思い出語りである「水月」も、どうにも湿った話だ。

だが、感傷的なのではなく、そこには虚無感が漂っている

川端康成という作家は、読者をいったいどこへ連れて行こうとしているのかよく分からない。

手を引かれて歩き始めたのに、急に振り切られたかのような、夢と現のあわいに突き落とされる。

 

 

再婚者;弓浦市 (講談社文芸文庫)

再婚者;弓浦市 (講談社文芸文庫)