名作といわれる作品には、名作と言われるだけの理由があるけれど、それを読むべき時はいつなのかが分かっていない。
今まで読んでいなかった名作を読んだときに、この作品はもっと早く出会うべきだったと思う時と、今だからこそ出会えたのだと思う時がある。
カミュは高校生の頃に、「異邦人」を読んだのだと思う。
同時代のサルトルよりは、気に入ったと思うが、何をどう思ったのかもう覚えてなどいない。
実存主義的な思考についても、あまりピンと来ていなかった。
既に学校の講座で記号論を取っていたし、構造主義やポストモダニズムの影響を受けつつあったからだ。
では何で今さらに、「ペスト」を読むのかと言えば、ここ数年世間を騒がしているコロナウィルスの影響だと言える。
見えない自然の災厄を前にして、無力な人間というものをどう考えるのか、というのがこの本のテーマなのだと思った。
無力にして不条理に命を奪われ、悲しみが鈍磨し、それでもその状況を生きるとはどういうことなのか、という考察であるが正解は敢えて言わない、という書き方だろう。
どこか啓蒙主義的な匂いがするし、この本を読んだことで、何かを考えた気になってしまうような本であり、恐らく10代の頃に読んだ方が良い本なのじゃないかと思った。