雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

ナジャ/アンドレ・ブルトン

ナジャは不思議な物語だ。

ナジャその人は不思議ではない。

ナジャは、プルトンが一目惚れしたちょっとエキセントリックな、言動が目立つ若い女というだけの気がする。

惚れた者の弱みであれやこれや翻弄されているブルトンだが、相手を神格化させたせいで、ナジャの奇行も先鋭化しているようにも思える。

だが、ブルトンから500フランを恵んでもらったが故の、ある種のサービスのようにも思えてしまう。

二人がどんな関係にあったのか、それはどうでもいいことで、二人の付き合いからブルトンが汲み出した「美」に関する考察こそがこの小説の要のように思う。

では「美」とは何か、がナジャによって啓示されたのであろうか。

もし、そうであるなら、ナジャとの出会いによって発見された美は、別離ととも変質するのではないだろうか。

ブルトンはナジャの痕跡を追い求めているのであって、ナジャそのものではない。

全ては思い出の中に存在し、思い出以外の場所には存在しない。

それを「痙攣的」と言うのはどういうことなのか。

つまるところ「一目惚れ」という事だけなのかもしれない。