喪失と悲哀
ポール・オースターの物語は喪失と悲哀に満ちている、と言ってみたところで、何も言っていないのに等しいと思う。
- 作者: ポールオースター,柴田元幸
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2006/12/22
- メディア: 文庫
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とは言え、この本も喪失と悲哀が主調音で、ふざけた回りくどい語り口や、残酷な描写や、独特のユーモアが、物語を彩っている。そういった小物に着目しても、物語の本質ではない。
主人公の喪失と悲哀を辿って行き、何らかのカタルシスが得られる、それがオースターの物語の魅力だと言ってみても、この本に関しては、カタルシスは得られないと思う。
最後の2ページぐらいがそれにあたるのかもしれない。でも、読みふけってしまうそれまでの物語からは浮いている。
とすれば、壮大な序文の付いたメッセージか、物語に無理やりつけたメッセージか?
(実はそう思ってはいない。ポール・オースターの本は大好きなのだ)