大正時代に晩年を徳島で過ごしたモラエスが、日本論/日本人論を記した一冊。
ポルトガル人であるモラエスから、徳島の町が、日本人がどのように見えていたのか、ということになるのだが、その筆致はとても好意的だ。
その贔屓目を差し引いて読んでみても、鋭い指摘がそこかしこに見られる。
例えば、日本人の特徴として、没個人性を挙げている。
だが、それを指摘し、西欧文明的な個人主義との対比において、優劣を判断するのではなく、そこに「汎神論的自然崇拝」として理解し、文化、芸術の基調として見出している。
また、中国文明の影響を受けながらも、独自に受容し変質させて、独自の日本文明として作り上げてきたことを指摘し、明治維新によってもたらされた西欧文明もまた、独自の日本文化として受容と変質を受けて作り上げられるであろうこと、そしてそれが千年先の事ではなく、一世紀か二世紀先であろうと記している。
この本が記された1925年の100年先はもうすぐだが、今の日本文化はモラエスの想像した姿に近づいているのだろうか。
- 作者: ヴェンセスラオ・デモラエス,Wenceslao de Moraes,花野富蔵
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1992/03
- メディア: 文庫
- クリック: 1回
- この商品を含むブログ (4件) を見る