雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

恐怖について/海野十三

短いながら、なかなか面白いエッセイだ。
恐怖とは何かを考察するのではなく、恐怖する実例を挙げていくだけだ。
その中身について書いてしまうと、ネタバレになるのでここでは引用しない。
なるほどと思うものもあれば、そうだろうかと思うものもある。
何に恐怖するかということもまた、その人のプロフィールのひとつであることは間違いない。
海野十三が恐怖するものは、その小説作品の源泉の一つになっているであろうことは、想像に難くない。
そう思うと、「屋根裏の散歩者」「人間椅子」といった作品から、江戸川乱歩の恐怖するものは、何となく海野十三と近しい感じがする。
「弓浦市」という怪談話の傑作がある川端康成はどうだろうか。
何だか想像がつかない。
化け物語ばかり書いた泉鏡花も想像がつかない。
むしろ「春昼」に描かれるような世界に恐怖が潜んでいるのかもしれない。
安部公房はどうだろうか、三島由紀夫はどうだろうか、石川淳は、坂口安吾は…
恐怖について考えることは楽しい。