雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

神隠し/小松和彦

COVID19で外出自粛なので、本を読む。

だいぶ前の再読。

神隠しの物語分析から類型を取り出して、という、一連の思考手続きが気になってしまった。

異界、鬼、竜宮城、というモチーフから、神隠しという社会的装置によって不問に付されていたものを探っている。

怪異を面白がるだけではなくそこから負の社会構造へと踏み分けようとするには、ちょっと分量が少なかったのかも知れない。

きちんとした研究があるのか調べてはいないが、この本でも少しだけ触れている人身売買ネットワークの発達と産業化が何か関係があるような気がする。

近世以降、近代、現代に至って、神隠しが語られなくなるにつれて、神隠しが隠蔽していたものが何に変って行ったのか気になる。

その社会から外れるものを、「神隠し」という口当たりの良い嘘のヴェールで被ってしまうこと、それも社会の一部であり手慣れたやり方であったろう。

口減らし、村八分、人身売買、などなど、公式な記録に残せない村落社会の掟みたいなものの残滓がそこにはあるという示唆が、この本の肝なのかもしれない。

そしてそれは都市化された社会の中にも残っているはずで、新たな掟と嘘が生まれているような気がする。