何となく図書館で借りてみた。
物語を読む気が起きなくて、随筆のようなものばかり手に取ってしまう。
そういえばと思ってプロフィールを確認したら、1929年生、1981年没、亡父とほぼ同い年、そして没年を追い越してしまっていた。
死者は歳を取らない。
久しぶりに読んでみると、良く言えば懐かしく、悪く言えば古臭い、と思った。
それは良し悪しの問題ではなく、その人が生きた時代を良く捉えているという事なのだと思う。
全然違うのだが、幸田文の随筆にも似たものがあって、自分の子供の頃は当たり前だと思っていたものが今になっては奇妙な感じがするけれど、だがそれも一つの事実として存在したことを文字に留めているという文章なのだと思う。
いずれ忘れ去られてしまい、誰も気に留めなくなり、年表の中の一行になってしまうだろうけれど、その時代に生きた人間には読み取ることができる雰囲気のようなものなのだが、それは私的な好みの範疇なのであり、分からない人には分からない類の事だから、恐らく同年代の読者にだって分からないかもしれない。
枕草子や徒然草のような数百年後も残る古典かというとそんなことはないと思うのだが、こういった随筆を面白がる人間というのは消えはしないことを秘かに願っている。
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