雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

オートバイ/アンドレ・ピエール・ド・マンディアルグ


冷めている醒めている褪めている?

オートバイ (白水Uブックス (54))

オートバイ (白水Uブックス (54))


買ったのは多分10数年前だったかと思う。
そのころ手に入るシュルレアリスム関係の本は、片っ端から買い漁っていた。
改めて読んでみると、なんて読みづらいんだろうという印象だった。
しかし、それは欠点ではなく、一つのスタイルであるということ。
主人公の行動と回想が時制を行きつ戻りつ物語が展開する。
だから、要約してしまうと、何ということは無い物語なのだが、それではこの小説の本質を捕らえてはいない。


この本がシュルレアリスムなのかと考えると、本質的に果してそうなのだろうかと思う。
日常に挿入される非日常に心を奪われる、それは被支配される側の甘美な幻想であり、マルキ・ド・サドの思想の延長にあり「O嬢の物語」に類似した幻想なのであろう。
オートバイ、レザー、サディズムといった小物が象徴しているもの、主人公の行動が意味するもの、時制を行きつ戻りつし主人公の意識に沿って展開する物語、それらの総体はシュルレアリスムであろうか?
高揚感も無く、とても冷たい感じがする小説。