雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

鏡花短篇集/泉鏡花


うねって跳ねて

鏡花短篇集 (岩波文庫)

鏡花短篇集 (岩波文庫)


いつ買ったのか覚えていないが、だいぶ前だったような気がする。久しぶりに引っ張り出してみると、まったく内容を覚えていなかった。なぜか一時、泉鏡花を片っ端から読んでいた。でも全集を買うお金もなく、やはり文庫でしか読んでいない。鏡花といえば、化け物であり、幻想であり、絢爛豪華なイメージがある。実際、読んでみると登場する小物や設定からそれはそうなのだが、それ以外の鏡花らしさのポイントは、やはり文体なのだと思う。植物や色に関する語の多さもあると思うのだが、今回気になったのは、文のリズムが特殊なのだと思った。何と言うか、うねるような跳ねるような、句点の打ち方、体言止め、それらがある種のリズムとなっていることが、読み進むときに影響しているように思う。また、擬態語、擬音、会話の語尾、そういったものが、物語のうねるような文体とは対比をなしている。そして、主客が曖昧な、ともすればどこの視点か判らなくなるような感じもする。