雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

笑う月/安部公房


夢マニア

笑う月 (新潮文庫)

笑う月 (新潮文庫)


他人の夢を聞かされることほど、つまらないものは無い、といったのは誰だったろうか?安部公房は夢を記録するために枕元にテープレコーダーを置いていたという。夢で得られた着想を育てて、小説へと仕上げたものもあるようだ。この本では、その一端が明かされている。その中でも、強迫観念的な夢や、観念的な夢、夢マニアならではとでも言えそうなものまである。かくいう私も一時期は枕元にノートを置き、夢を記録していた。そうするうちに、夢の中の夢の中の夢を自覚するような夢を見たりした。しかし、安部公房の記述する夢が、小説とあまり変わらないのは、結局のところ、夢日記におけるリアリティは、文章の力によるものだからだろう。カルロス・カスタネダによると、夢の中で自分の手を自由に見ることが出来るようになることが、夢見の技法の第一歩であり、戦士への道の入り口であるらしい。小説と同じくらい、この本は刺激的でもある。