古今東西の想像上の動物のコレクションである。
こういう本は、何か調べ物で開くか、純粋に暇つぶしで読むかのどちらかだろう。
もちろん、今回は後者で、正月休みの間にちょこちょこ読み耽っていた。
感想を書くのはどうにも難しい。
あえてひとつ紹介するとしたら、「ペリュトン」だろうか。
ペリュトンそのものより、それをめぐるエピソードが、ボルヘス的だ。
エリュトライのシビュラ(巫女)の神託により、ローマ市はペリュトンによって焼き払われる予言が下されたという。
だが、その記録は642年アレクサンドリアの大火によって焼失してしまった。
16世紀にフェズ生まれの律法学者(ヤコブ・ベン・カイム?)が残した歴史文書に関する論文の中に、既に散逸してしまったギリシアの古典注解学者(未詳)の著作からの引用があり、ペリュトンに関しての記述があることがわかった。
だが、この律法学者の論文はドレスデン大学に保管されていたのだけれど、第二次世界大戦の連合軍によるドレスデン爆撃、またはナチスによる焚書により消失してしまったという。
焼失が入れ子のように折りたたまれ、存在しない本によって語られる想像上の動物という存在、眩暈のような重層構造にニヤリとする。
- 作者: ホルヘ・ルイス・ボルヘス,マルガリータ・ゲレロ,柳瀬尚紀
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