雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

日本奇僧伝/宮元啓一


それは繰り返すのか?

日本奇僧伝 (ちくま学芸文庫)

日本奇僧伝 (ちくま学芸文庫)


この本の読みどころは、実は本文ではない。
本文は日本仏教史における、傍流の僧侶たちのエピソードのコレクションである。
序文にもあるが、彼らの人間臭さを強調し、判ったようなふりをするような記述は、注意深く避けられている。
そこにあるのは、そういったエピソードを創り出していった伝承の力と、それを支える人々の意識にたどり着きたいという意思だと思う。
だが、著者が何を思って書いたかは、「あとがき」にある。
それをここでは明かさないが、一通り「あとがき」まで読み通すと、納得がいくのだ。
この本に秘められている、現代への批判は厳しく、地道ながらも力強い。
現世権力と結びついた来世救済といった歴史教科書にあるような、僧侶たちは出てこない。
あくまで求道者としての、宗教家としての個人の姿のように見える。
だが、ここにあるのも、実は、「危険な純粋さ」のヴァリエーションなのかもしれない。
「奇僧」たちを、持ち上げるのでもなく、貶めるのでもなく、それを眺める視線は必要かもしれない。