- 作者: 都築響一
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2003/03
- メディア: 文庫
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最初に出たのは、1992年だったか。
撮影されたのは、バブルの最後の頃か。
東京に暮らす人々の生活空間を集めた写真集である。
持っているのは京都書院の文庫本だ。
誰かの生活を覗いているようでありながら、写真に部屋の主は登場しない。
誰もいない生活空間だからこそ、そこには廃墟を写したかのような非現実感が漂う。
部屋の主は簡単なプロフィールが紹介されている。
結構、アーティストや自由業が多いのは、時代のせいだろうか?
それぞれの個性的な空間を写していながら、東京に暮らす普通の人々としての、普遍的な何かがある。
そして、バブルの頃の奇妙な明るさとでも言いたくなるような空気感がある。
この本をあと30年後に読み返したらどう思うのだろうか?
だが、ここにあるのは静止された現在であろう。
過去でも未来でもないゼロ地点としての現在が、写真というメディアを通してここに表現されているのだと思う。
あとがきに書かれているが、単行本から文庫本になった時点で、ほぼ9割の部屋は既に無くなっていたという。
その変化の早さ、その儚さが、まさに東京スタイルとでも言うべき姿かもしれない。
或いはバブルの消滅とともに、ここにあるスタイルは成立しなくなったのかもしれない。