せっかくだからと池澤夏樹をもう一冊。
これは短編集である。
改めて読んでみると、なかなか面白かった。
これらの短編に通底しているのは、失われたものへの回想であり、そして、外部へと誘う力のようなものを暗示させる。
失われたものたちは、残されたものとは異なる、この世界の外側へ滑り出してしまったようだ。
私はなぜこの物語たちを面白いと思うのだろう。
物語の内側に侵入して、その枠組みを壊そうとする、外側に憧れているのではない。
喪失と回想、という枠組みなのではないかと思う。
そして、あの頃の私はそれを意識していたのだろうか。
(持っているのは単行本だが、文庫化もされているようだ)

- 作者: 池澤夏樹
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2006/05/25
- メディア: 文庫
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