雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

百鬼園随筆/内田百けん


このところ「良い文章」というのに触れていない気がして、内田百間(本当は門構えに月)の随筆集を引っ張り出す。
題材は日常のことや、悪口や、飛行機、借金など様々だが、その語り口がやはり良いのだと思う。
例えば、飛行機に乗るときに高所恐怖症は、離陸直後ぐらいまであって、高度が上がると薄れていってしまうが、地上に自分の乗った飛行機の影を発見したとたんに、怖くなったという。
こう書いてしまうと、面白くも何とも無いことが、内田百けんの手にかかると何とも味わい深いものになる。
また、蜻蛉玉では「私」の病的なまでの几帳面さが、想像と現実を混ぜながら語られてゆく。
しかもその「私」とは作者ではないと、冒頭でわざわざ断り書きを書いているのだが、果たして本当だろうか。
吸殻に始まり、日本銀行の金庫に飛び、切腹羊羹に終わる、この随筆がとても好きだ。
つまるところ、随筆の内容が何であれ、その語り口に引き込まれてしまう。
借金や貧乏の話などは、毛頭、借金なんぞする気も無いのだが、それもありかと思わせるところまで連れて行ってくれる。(しないけど)
試しに「蜻蛉玉」を立ち読みでもして、その面白さが判ったら、気に入るのではないだろうか、と思う。


百鬼園随筆 (新潮文庫)

百鬼園随筆 (新潮文庫)


(この新潮文庫のカバー絵は、芥川龍之介によるものだったようだ)