匂いの記憶のようなもの
- 作者: 寺山修司
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2008/11
- メディア: 文庫
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寺山修司というその名前だけで、中学生の頃の自分は、何かイケナイコトに近づいたような気がした。
エログロ、フリークス、センチメンタリズム、演歌、競馬、アングラ、路地裏、大衆演劇、そんな言葉が寺山修司の本には渦巻いているような気がした。
それは強烈な光景の記憶としてではなく、ある種のノスタルジーにも似た、云わば匂いの記憶のような曖昧な、でも何かを思い出しそうになる感覚がある。
寺山修司の描く母なるものへの郷愁は、恐らくフィクションの要素が多いのでは無いだろうか?と推測する。
それは郷愁を呼び起こすための舞台装置としての母のイメージを作り上げ、そのセンチメンタリズムを詩情とするための装置なのだと思う。
この本はルポルタージュという体裁だが、その実は、寺山修司の世界を通して見えた架空の世界のようにも見えてくる。
無味乾燥な現実でも、見方を変えることで、それが事実かどうかはともかく、魅力あるものを引き出しているということだろう。
そういえば、まだ深夜番組が中心だった頃のタモリは、寺山修司のモノマネをよくやっていたような気がする。