自らへの懲罰

- 作者: 植島啓司
- 出版社/メーカー: ベネッセコーポレーション
- 発売日: 1995/11
- メディア: 文庫
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この本は、小説であり、旅行記であり、ロラン・バルトへのオマージュであり、「宗教的なもの」の要約であるように思った。
ひとつの事件から、主人公たちの逃避行は始まり、その過程は恋愛の相似であり、各章はロラン・バルトの「恋愛のディスクール・断章」への注釈であり、物語は「宗教的なもの」によって頓挫させられる。
男から少女への恋は、過去の少女の母との思い出によって禁じられている。
少女はまだ恋を知らないという、つまり、未成熟であることで禁じられている。
少女の母は、その死によって、生前の恋を禁じられたのだ、といえる。
それらの禁忌と侵犯に引き裂かれる場から、影の存在が生まれる。
影は主人公たちを追い詰める。
だが困難な状況になるほどに、男は惹かれてゆくが、自らへの懲罰が影の存在となったのはなのでは無いだろうか?