旅に誘うもの
- 作者: 金子光晴
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2007/12/20
- メディア: 文庫
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いよいよ、ベルギーから日本へ向けて帰ってくるのだが、シンガポールで放浪する。
金子光晴を旅に誘うものは何か?と考えても良く判らない。
何となく、ここではないどこかを探しているようでもあるが、それは日本でもアジアでもヨーロッパでもないようだ。
生まれついての放浪なのだろうか?
「どくろ杯」「ねむれ巴里」「西ひがし」と放浪する自伝3部作を読んできて、最後のほうにこんな言葉があった。
『人生とは、愚劣な連続への加担で、そのくせ、はてしもない欲望をいい加減なところであきらめるよう、そのところだけは力はぬいて、往生際よくできているもののようだ』
この達観が詩人の心情をストレートに表しているような気がする。
ここであろうとどこであろうと、それを確かめるのが、この旅の意味するところだったのではないだろうか?