雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

西ひがし/金子光晴


旅に誘うもの

西ひがし (中公文庫)

西ひがし (中公文庫)


いよいよ、ベルギーから日本へ向けて帰ってくるのだが、シンガポールで放浪する。
金子光晴を旅に誘うものは何か?と考えても良く判らない。
何となく、ここではないどこかを探しているようでもあるが、それは日本でもアジアでもヨーロッパでもないようだ。
生まれついての放浪なのだろうか?
「どくろ杯」「ねむれ巴里」「西ひがし」と放浪する自伝3部作を読んできて、最後のほうにこんな言葉があった。

『人生とは、愚劣な連続への加担で、そのくせ、はてしもない欲望をいい加減なところであきらめるよう、そのところだけは力はぬいて、往生際よくできているもののようだ』

この達観が詩人の心情をストレートに表しているような気がする。
ここであろうとどこであろうと、それを確かめるのが、この旅の意味するところだったのではないだろうか?