雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

第一阿房列車/内田百けん


目的もなく旅に出る。
旅というよりはただ列車に乗る。
現代で言うところの「乗り鉄」に近いのかもしれないが、目的があってはならない。


「阿房と云うのは、人の思わくに調子を合わせてそう云うだけの話で、自分で勿論阿房だなどと考えてはいない。用事がなければどこへも行ってはいけないと云うわけはない。なんにも用事はないけれど、汽車に乗って大阪へ行って来ようと思う。」


冒頭からこんな風に始められると、一気に百鬼園先生の世界に引き込まれてしまう。
決してふざけていたり、誰かをおちょくったり、馬鹿にしているわけではないけれど、何だか可笑しな旅である。
連れは、ヒマラヤ山系氏と称する、国鉄職員のようだ。
そもそも目的はないから、観光地を巡ることもあまり無く、列車から外を眺めているとか、ただ黙って座っているとか、乗換えで何時間も待ったりする。
会話もかみ合ってるんだか、かみ合ってないんだか、読んでてニヤニヤしてしまう。
この可笑しさに近いのは、ジム・ジャームッシュ監督の「Stranger Than Paradise」の感じだろうか。
面白いことを説明するのは野暮なものだから、多くを語らず仕舞いとしよう。


第一阿房列車 (新潮文庫)

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