この本を読んだのは、いつのことだったのか、もう憶えていない。
ともあれ、自分のことが気になってしようがない、10代後半の頃にちがいない。
この本は、精神医学の観点からの時間論であり、意識論であろう。
時間という存在を、もの的に捉えることから、こと的に捉えることにより、自己のあり方を三つの類型に整理する。
それらは、「いまから」の未来に自己を見出す分裂病的時間(アンテ・フェストゥム)、「いままで」の過去に自己を見出す鬱病的時間(ポスト・フェストゥム)、永遠の「いま」に自己を見出す躁病的時間(イントラ・フェストゥム)である。
必ずしもそれらが狂気的なあり様かというとそうではなく、それらの相を行き来するのが人間のあり方だと捉える。
果たして10代の自分はこの本を読めていたのかは疑問だが、これらの類型は憶えていたところを見ると、何がしか感銘は受けていたようだ。
やはり、若い頃の読書はそんなものかもしれないと思う一方、濫読でもこういった本に触れていたことは何がしかの糧になっていたようにも思う。
- 作者: 木村敏
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 1982/11/22
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