酒を呑んでいる時の馬鹿話は好きだ。
というか、むしろ馬鹿話しかしたくない。
深刻な悩みを聞きながら呑む酒はどんな味だか知らない。
この本は古代ローマの著述家プルタルコスが、宴会で話した話題を集めた、という体の随想集とでも言うべきだろうか。
全部で33編の話題が編訳されている。
もともとは、全9巻で95編あったらしいが、散逸してしまい83編しか伝わっていないという。
話題は多岐に渡るのだけれど、結論は無い。
むしろ、詩歌、神話、先達の言葉からの引用を織り交ぜ、互いに議論するのを愉しんでいる。
結論が重要なのではなく、話を繋げて広げて行けることが重要なようだ。
例えば、「鶏と卵ではどちらが先か」という議論がある。
卵は不完全な形態であり、鶏は完成した姿であるから、卵が先であるとか。
鶏は卵の部分になり得ないから、卵が先であるとか。
鶏は土から生まれるが、卵は生まれないため、鶏が先であるとか。
先であるとはどういうことか。
部分が全体に先行するのか、不完全から完全が生まれるのか。
それらは、象徴論的であったり、形而上学的であったり、つまり世界をどう捉えるかという議論なのだ。
- 作者: プルタルコス,柳沼重剛
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1987/10/16
- メディア: 文庫
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