雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

2014-01-01から1年間の記事一覧

カーブの向う・ユープケッチャ/安部公房

この本は、「砂の女」「燃えつきた地図」「方舟さくら丸」といった長編の原型となった短編が収められている。 基本的に安部公房の物語は陰鬱だと思う。 灰色にくすんだ日常のような世界なのだが、どこかしら奇妙な歪みがある。 砂に埋もれそうになっている集…

14歳からの哲学 考えるための教科書/池田晶子

この本もまた図書館で借りた。 自分が14歳だった頃に、この本があったとしたら、手に取って読んだかというとそうは思わない。 池田晶子という名前は、どこかで聞いたことはあった様な気がするが、読んだのは初めてだ。 この本は平易な言葉で書かれてはいるが…

書を捨てよ、町へ出よう/寺山修司

この本のタイトルが好きだ。 自分としてはむしろ、書を携えて、町へ出よう、なのであるが、あえてさかしまなことを言われると気になる。 この本は、寺山修司のアジテーションであり、お涙頂戴的なエッセイだ。 いまさらどれも真に受けるようなものではないこ…

堕落論/坂口安吾

この本は幾度と無く読み返してしまう。 そして読み返す度に沁みてくるようだ。 何故もこう読み返すのか考えてみると、言っていることが分かりやすいからだろうと思う。 もっと言えば、率直なのだと思った。 韜晦や反語や皮肉ではなく、直截な言葉なのだと思…

三万年の死の教え/中沢新一

死について考えるようになったのは、十代の後半だったろうか。 ありふれた思春期の考えるふりから、始まったのだと思う。 といっても、自殺や殺人を妄想するようなことではない。 その辺りの健全さ、裏返すと、優等生的な発想から逸脱できないのは、あらかじ…

楽しく学ぶ「教養」入門(クーリエジャポン2014年6月号)

店頭で見かけて気になっていたのに、買うタイミングを逸して、バックナンバーを探す羽目になった。 とは言え、ブックファースト新宿店あたりにあるだろう、と高をくくっていたら、まんまと平積みされていた。 こういう時は、大型書店はありがたいと思う。 雑…

ブッダ最後の旅 大パリニッパーナ経

自分のパーソナリティとして宗教的要素が皆無であるが故、仏経典をどのように読めばいいのか、まだ自分の中で定まっていない。 だから、一字一句を「教え」として受け止めることもできないし、それらに対して批判的な立場を取ることもできない。 できるとす…

人間の建設/小林秀雄、岡潔

この本もまた図書館で借りた。 小林秀雄は好きじゃない。 岡潔も知らない。 小林秀雄を読んだのは、高校生か大学生の頃だ。 何冊か読んだが、記憶にも残っていない。 (去年あたり、1冊ぐらい読み返したかもしれない) 内容は忘れているくせに、好きではな…

名人は危うきに遊ぶ/白洲正子

この本もまた図書館で借りた。 向田邦子の本には年齢のシンクロニシティに呼ばれたのだとしたら、白洲正子の本に呼ばれたのは何だろうか。 名家の娘であり、稀代の実業家の妻であり、趣味も生活も接点など無い。 それでも草木を愛で、季節を楽しむ姿には、何…

夜中の薔薇/向田邦子

この本もまた図書館で借りた。 この本を書いたのは、どうやら今の自分と同年代のようだ。 自分の周りの同年代の友人たちは、それぞれがそれぞれの生活に忙しく、会う機会も少ない。 学生の頃のように、ただ会って無為に時間を潰すようなことも無い。 だから…

あなたにここにいて欲しい/新井素子

この本もまた図書館で借りた。 実に20数年ぶりの再読である。 確か友人に薦められて読んだうちの一冊だったか、ピンク・フロイドの「Wish you were here」が引用されているから手を伸ばしたのか、それはもう定かではない。 ともあれ再読してみたのだが、スト…

ムーミン谷の彗星/トーベ・ヤンソン

この本もまた図書館で借りた。 かすかな記憶なのだが、日曜夜7:30からのカルピス名作劇場で見たのだと思う。 だが、子供の頃はあまりTVを観ていなかったので、本当にリアルタイムで観たのか、再放送や懐かしのアニメ特集で観たのか、いささか不確かなのは否…

コロンブスからカストロまで カリブ海域史、1492−1969/エリック・ウィリアム

この本もまた図書館で借りた。 こちらの記事に触発されて、読んでみた。 高校の世界史の不勉強が祟って、あまり理解出来ているとは言い難いが、大航海時代におけるスペインとポルトガル、その覇権に挑戦するフランス、イギリス、ドイツ、そしてアメリカの台…

戦後短編小説再発見10 表現の冒険

なんとなく読み返してみる。 収録されているのは、以下の通り。 内田百けん「ゆうべの雲」 石川淳「アルプスの少女」 稲垣足穂「澄江堂河童談義」 小川信夫「馬」 安部公房「棒」 藤枝静男「一家団欒」 半村良「箪笥」 筒井康隆「遠い座敷」 澁澤龍彦「ダイ…

エピクロス 教説と手紙

久しぶりに取り出してみた。 エピクロスといえばエピキュリアンの元祖であり、日本語で言えば快楽主義というのは、大いなる誤解だ。 エピクロス自身は自然哲学者の流れであり、その快楽主義は積極的な快楽の追求という意味よりは、害を避けてアタラクシアの…

ムーン・パレス/ポール・オースター

なんとなく弱っているものだから、好きな本でも読むことにした。 この本を読むのはもう何度目か分からないが、何かあると逃げ込みたくなるアジールのようなものになっている。 本を読んで人生が変わるというのは度を越した誇張だと思うが、何か息が楽になる…

日和下駄/永井荷風

本を読むペースが落ちているのは、寝不足が続いているからだ。 寝不足なのは、残業が続いているからだ。 この本はあまりにも有名だから、内容を改めて解説することもないだろう。 読みながら思ったのは、荷風は何を見ていたのかということだ。 現在から過去…

江戸はネットワーク/田中優子

この本もまた図書館で借りた。 江戸時代の社会構造は封建制だと学校では習ったと思うが、武家社会や公家社会や町民社会など、さまざまな権力構造が多層的に入り組んでいたのではないかと思う。 それらの様々な社会を横断する俳諧、狂歌、黄表紙、浮世絵、芝…

東日本と西日本/

この本もまた図書館で借りた。 網野善彦と宮本常一の名前があったので読んでみようかと思ったのだが、正直なところ期待外れだった。 いまさら東日本と西日本を対立項として捉えることに、あまり意味があることとは思えない。 古代から現代までの縦糸に対して…

グローバリゼーションの中の江戸/田中優子

この本もまた図書館で借りた。 やけに平易な言葉で書かれていると思って、よくよく見たら、岩波ジュニア新書だった。 江戸時代における諸外国との交流を、服装、食器、視覚といった点から考察し、一般的に「鎖国」と言われる状態ではなかったことを考察して…

メガネがわかる本

つい衝動買いをしてしまった。 最近、目が疲れやすくて、メガネをかけることが多い。 あまりかける前提で考えてなかったので、JINSのメガネをかけるのだが、少しずり落ちる。 以前作った、999.9(フォーナインズ)の方がフィットしていたのだが、今と度が合…

サラジーヌ 他三篇/オノレ・ド・バルザック

この本もまた図書館で借りた。 この本を読もうと思い立ったのは、ロラン・バルトの「S/Z」に興味があったからに他ならない。 バルザック作品そのものには、大して興味はない。 古典作品への素養が足りないと言ってしまえばそうなのだが、強いて言えば「セラ…

青い車/よしもとよしとも

久しぶりによしもとよしとも氏の「青い車」を読み返してみようと思ったのは、数日前にラジオで小沢健二の曲が流れていたからだ。 久しぶりに聞いた小沢健二の歌声は、何だかとても粘っこい感じがした。 演歌のコブシとも違う、絡みつくような感じに近い。 渋…

今週のお題「春になれば」

ブログの引越でもしようか検討中。 引越しと言っても、はてなブログへ。 はてなダイアリーで何も困っていないけれど、環境を変えるというか、ちょっと何かをしてみたい。 とりあえず時期は未定。 以前使っていた「ほんつな」でこのブログを始めたのが2005年…

味満亭/大野真志郎

古い漫画を引っ張り出して読む。 もともとモーニングで連載していたのを読んでいたが、単行本が出たので買ったのだった。 奥付を見ると1997年なので、もう17年前かと思うとこの本のことなど覚えている人などいるまい。 四コマ漫画で食と貧乏が基調にあって、…

イェルサレムのアイヒマン/ハンナ・アーレント

この本もまた図書館で借りた。 最近、図書館や本屋の「アンネの日記」が破られる事件があったが、その事とこの本を読む動機とは関係が無い。 恐らくどこかのブログで、この本の書評を見かけたような気もするが、もう憶えていない。 そもそも、ナチスドイツの…

鴎外随筆集/森鴎外

この本もまた図書館で借りた。 森鴎外はとんと縁が無かったのだけれど、たまにちょっと読んでみたい気にさせられる。 小説だけでなく、随筆も読んでみようかと思った。 そういった本を読むのには、図書館が便利だ。 この本は、鴎外の随筆をいくつか集めてい…

BOOK246閉店

密かに好きな本屋だったのだけれど、4/15に閉店することになったらしい。 http://book246.com/news/8244 旅をテーマにした本屋で、南青山にある。 近くで働いていた頃は、仕事帰りにふらりと立ち寄ったりした。 隣にはカフェもあって、まぁ土地柄もあってか…

マレー蘭印紀行/金子光晴

昭和初期の東南アジア。 金子光晴は日本を脱出し東南アジアを放浪し、やがてパリに行き着く。 「どくろ杯」「西ひがし」「ねむれ巴里」での旅の記憶より、この本に描かれる南国の風景は、生活の匂いがする。 日本人、中国人、マレー人、インド人、様々な民族…

ぢるぢる旅行記/ねこぢる

熱を出して寝込んだので、いくつか本を読みまくっていた中の一冊。 ねこぢるは90年代に活躍し、自殺してしまった漫画家である。 一時、気に入って買い漁っていたが、最近はあまり読んでいない。 ねこぢるの作品の中でも、この本は読みやすい方だろう。 旦那…