雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

カーブの向う・ユープケッチャ/安部公房

この本は、「砂の女」「燃えつきた地図」「方舟さくら丸」といった長編の原型となった短編が収められている。
基本的に安部公房の物語は陰鬱だと思う。
灰色にくすんだ日常のような世界なのだが、どこかしら奇妙な歪みがある。
砂に埋もれそうになっている集落の夜の労働、見慣れたはずだったカーブの向こう側にある町並み、自分の糞を食べてあたかも時計の針のようにくるくる回る虫。
他にも、保険金詐欺のための簡易交通傷害保険自動販売機、会社ぐるみの詐欺のための完全映画、地下の子供部屋に幽閉されている青白い子供たち。
皮肉めいた薄笑いさえもない、陰鬱なモチーフの短い物語なのだ。
だが嫌いではない、いや、むしろ安部公房は好きな作家だ。
しかし、描き出される世界は陰鬱だ。


カーブの向う・ユープケッチャ (新潮文庫)

カーブの向う・ユープケッチャ (新潮文庫)