雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

2013-01-01から1年間の記事一覧

マルジナリア/澁澤龍彦

マルジナリアとは、本の余白への書き込み、傍注といったことらしい。 気の向くままに綴られたエッセイは特に統一感も無く、思いついたことを書いている風だ。 とはいえ、古今東西の話題に飛ぶのは、いかにも澁澤らしい。 しかし、河出文庫の手帖三部作のよう…

夢を見た/ジョナサン・ボロフスキー

ボロフスキーについて、どう説明すればいいのか。 例えばこうだ。 1980年代に日本に於いて良く知られたアメリカの現代アート作家。 どうもしっくりこない。 興味をもった人は、ネットで検索するだろうし、知っている人は今更だろうから、とりあえず割愛しよ…

チェルノブイリ・ダークツーリズム・ガイド/東浩紀、津田大介、開沼博、速水健朗、井出明、 新津保建秀

会社帰りに衝動買いをした。 東浩紀氏の著作を読むのは、笠井潔氏との往復書簡以来である。 一般的な話として、こういった本を手に取るということは、原発反対という態度に繋がるように見えるかもしれない。 だがこの本は、反対の立場で書かれている本ではな…

「いき」の構造/九鬼周造

ちょっと前に、青空文庫で読み終わっていた。 「いき」とは何か、を考察した本である。 そんなのは無粋だというおちょくりは置いておいて、こういった「日本的なるもの」を解説するのは、どこを目指しているんだろうと思う。 世界の異文化に向けて発信するも…

ランスの大聖堂/ジョルジュ・バタイユ

バタイユの最初期の文章を集めた本。 ランスの大聖堂に対して、まだキリスト教を棄教していないバタイユの、ファナティックな礼賛は何だろう。 そこには私の理解しきれない何かがあって、それは存在の根本に関わるものであるような気がする。 バタイユの語る…

作家の口福

この本は、朝日新聞の土曜版に連載されたコラムを集めたものらしい。 食について、様々な作家が寄稿しているが、大半は初めて読んだ。 恩田陸 糸山秋子(糸は旧字) 古川日出男 村上由佳 井上荒野 山本文緒 藤野千夜 川上未映子 森絵都 津村記久子 三浦しを…

8.15と3.11 戦後史の死角/笠井潔

久しぶりに読んだ笠井潔は相変わらずだなと思った。 何が相変わらずなのかというと、日本に対する憎悪と世界同時革命の夢である。 この本は、終戦に至る日本軍と、福島原発事故における政府の意思決定のあり方を並べ、そこに日本的なるものを見いだし、批判…

遠い朝の本たち/須賀敦子

須賀敦子氏の本を読むのは初めてだが、アントニオ・タブッキの翻訳でその名前は以前から知っていた。 この本は、本好きのためのエッセイといっても良いだろう。 須賀敦子氏の本への愛情があふれている。 あまり付け加えることは無い。 遠い朝の本たち (ちく…

人生論/岡本かの子

図書館で目に留まったので借りてみた。 岡本かの子を読むのも初めてだし、人生論なんてタイトルの本は、敬遠して手に取ったことは無い。 なのに、目に留まったということは、年を取ったということかもしれない。 だが読んでみて、何が言いたいのかさっぱり入…

科学と抒情/赤瀬川原平

確か記憶だと、ユリイカに連載されていた。 懐かしく読み返しもするのだけれど、細部は忘れていることも多い。 その中でも、広瀬隆についての話題が、気に留まった。 広瀬隆の顔が、前にも増して受難者の顔となっていると言う。 いろんなものを背負い込んで…

家族八景/筒井康隆

例えば、この物語の主人公は、ジュスティーヌなのかジュリエットなのか、と考えてみる。 もちろん、マルキ・ド・サドの、「ジュスティーヌ物語あるいは美徳の不幸」「ジュリエット物語あるいは悪徳の栄え」のことである。 主人公の火田七瀬は他人の心が読め…

佃に渡しがあった/尾崎一郎、ジョルダン・サンド、森まゆみ

かつて佃島へは渡しに乗って行ったのだそうだ。 私が生まれる数年前に、その渡しは廃止になったらしい。 佃島という場所は、もともと漁師町であった。 その漁師町としての景色が、尾崎一郎氏の写真によって収められている。 東京のほぼ中心に位置しながら、…

チャイナタウンからの葉書/リチャード・ブローティガン

ブローティガンの詩集のアンソロジーから池澤夏樹氏が60編訳出した詩集らしい。 何度か読み返していたのだけれど、あとがきを読んでいなかった。 ブローティガンの詩に浸ろうと思っていたのだが、読んでみるとなんか違う。 それは、ブローティガンのせいでは…

インド夜想曲/アントニオ・タブッキ

何度でも読み返したい本のうちの一冊である。 なぜ私は読み返したいと思うのだろうか。 この小説は友人を探す物語であり、旅をする物語であり、あるいは存在の物語でもあり、物語についての物語でもある。 物語としての起承転結を味わいたいと思っているので…

サラサーテの盤/内田百けん

何が読みたいのかよく判らない時期に、自分がはまり込んでいる。 こういうときは、好きな本だけ読んでいよう。 というか、もともと好きな本だけ読み返すんじゃなかったっけ? まあ、いいか。 内田百けんの作品でも、やはり「サラサーテの盤」「東京日記」に…

銀座24の物語/銀座百点編

学生の頃に友人たちとした話に、 「東京と言ったらどこを思い浮かべるか?」 というのがある。 横浜方面の友人は渋谷と答え、多摩方面の友人は新宿、埼玉方面の友人は池袋と答えていた。 北関東から東北出身だったら上野や浅草とでも答えただろうか。 自分の…

回転どあ・東京と大阪と/幸田文

図書館で何となく借りてみた。 例えばこういった随筆を読んでいると、作者の生活がふっと見えるような気がする時がある。 そのイメージが合っているのか判らないが、自分の中の過去の映像と重なるように見える。 そこには作者の生活や思いが入っているからだ…

2011 危うく夢見た一年/スラヴォイ・ジジェック

2011年がどんな年だったのかを個人的に考えることとは別だ。 しかし、世界情勢で言えば「アラブの春」「ヨーロッパ危機」といったキーワードで語られる年なのだろう。 それらを楽観的に民主化の波や、資本主義の限界と片付けてしまうとしたら、既に思考が停…

アルジャーノンに花束を/ダニエル・キイス

この物語へのアプローチを、知性と倫理の相反する哀しみとして読むのが正門だとしたら、裏門はどこにあるのか探してみる。 知恵遅れの主人公チャーリーの報告書の体裁であるから、チャーリーを取り巻く人々の視点から考え直してみるのが有効だろうと当たりを…

カンバセイション・ピース/保坂和志

この本は、記憶と視覚についての小説だと思った。 あるいは、家と猫と横浜ベイスターズについての小説と言っても良い。 起承転結で表される大きな物語構造はほぼ無いに等しいのだが、登場人物たちの会話の中に畳み込まれている。 だから、一見すると何も起こ…

秘密。私と私のあいだの十二話

何だか本を読まない時間が過ぎてゆく。 珍しいことなのだが、たまには良いかとも思う。 死にはしないし、生活にだって困らない。 だが、何だか後ろめたい気がする。 時間の無駄遣いというか、すべきことをしていない感じがする。 すべきこと? その考えには…

ピープルウェア/トム・デマルコ、ティモシー・リスター

今は何が読みたいのか判っていない。 何か上手く捉えられないものがあって、その正体すら判っていない、という感じがする。 POP(プロセス指向心理学)的に考えれば、重要なことへの身体的反応を示しているということなのかもしれないが、とりあえず嵐が過ぎ…

美女・女靴下の話・秋の暮/西東三鬼

いずれも青空文庫に入っており、koboで読めるのだが、はまぞうで持って来れないということは、Kindleには入っていないと言うことか。 それはともかく、西東三鬼の随筆三篇を読んでみた。 「美女」は、西東三鬼が一目惚れした女の話、「女靴下」はちょっと奇…

読書ログはじめました

URLはこちら↓ http://www.dokusho-log.com/ 基本的には、こちらの記事の転載にはなると思うが、ぼちぼちと続けようかと。 ちょっと今は亡き、「ISIS本座」的な感じもする。

羅生門・鼻/芥川龍之介

これは、子供に読ませてはいけない本なのではないだろうか、とさえ思える。 確かな記憶では高校生の現国、もしかしたら中学生の頃、教科書を通じて、初めて芥川龍之介に触れたと思う。 この「羅生門・鼻」は、所謂、王朝ものの短編を集めている。 国語の教科…

文鳥・夢十夜/夏目漱石

なかなか読み終わる本が無いので、合間に電子書籍で「文鳥」を読み返してみた。 けだし名品である。 いまさらそんなことを改めて言う必要も無いくらいだが、やっぱり名作だと思った。 興味があった訳ではなかったのに、鈴木三重吉に勧められて、夏目漱石は文…

人柱の話/南方熊楠

少し電子ブックにはまっているようだ。 やはり、スマホで手軽に読めるのは良い。 逆に、電池が切れると読めなくなるのはいまひとつ。 なので、電子ブックリーダーが欲しくなる。 だったら、タブレットで良いんじゃないかとも思う。 ともあれ、南方熊楠を読ん…

易の占いして金取り出したること・失うた帳面を記憶力で書き復した人/南方熊楠

南方熊楠までもが青空文庫になっているとは、ちょっと驚きだ。 今年からは、柳田國男も入ってくるだろうか。 内田百けんは入っていない。 それはともかく。 この本は、というよりこの随筆2篇と言った方が良いだろうか、南方熊楠がこんな話がある、という感…

だしの取り方/北大路魯山人

またしても電子書籍。 そして只。 「何でも鑑定団」でお馴染みの、魯山人である。 内容はタイトルの通りの薀蓄なので、特に取り立てて言うことも無し。 読みたい本が無いときのつなぎに、こういった電子書籍は役に立つかもしれない。 だしの取り方作者: 北大…

ナショナル・ストーリー・プロジェクト/ポール・オースター

長いことこの本は買おうかどうしようかと迷っていた。 でも、先日思い切って買ったのだ。 買ったは良いのだけれど、今度は読もうかどうしようかと迷っていた。 (その隙に、電子書籍に手を出したりして) ポール・オースターがラジオ番組のために、聴取者か…