雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

2013-01-01から1年間の記事一覧

此処彼処/川上弘美

図書館で借りてみた。 川上弘美氏はこれで三冊目ぐらいだろうか。(めんどくさいから数えない) 場所をめぐるエッセイである。 この本もまた、さらりと読み流せる。 自分の場所なるもの、それについて書くのかと思いきや、するすると別の方向に滑り出してい…

女流阿房列車/酒井順子

図書館で借りてみた。 著者のことは全く知らない。 「阿房列車」というタイトルに惹かれただけのことだ。 だが、読んでみると、これがなかなかに面白い。 軽くさらりと読み流せる。 自称の乗り鉄のようだが、車中で爆睡していたり、うんざりしていたり、何だ…

鍵から抜け出した女/海野十三

電子ブックを引き続いて読んでみる。 一篇づつという辺りはお手軽と言うか、もどかしいと言うか。 確かにこの文体似ているかもしれない、と思い始めてきた。 海野十三は「新青年」にも、作品を発表していたようだ。 そういわれてみると、モダニズムの雰囲気…

三角形の恐怖/海野十三

以前より、「文体診断ロゴーン」で、私の文章が海野十三に似ているとの解析結果が出ていたので、ならば読んでみようという気になった。 しかも、電子ブックなんて無縁だと思っていたのだけれど、スマホに買い換えたついでに電子ブックリーダーを入れて、ダウ…

日本の島々、昔と今。/有吉佐和子

本屋で見かけてちょっと気になったので、図書館で借りてみた。 そもそも有吉佐和子氏を読むのは、これが初めてである。 あまり手が延びない類の作家だ。 苦手ということでもないのだけれど、あまり興味をそそられないと言うか。 だいたい、他の著作を訊かれ…

新編 綴方教室/豊田正子

本屋で立ち読みして、鶏を絞める件を読んで、ちょっとだけ気になったので図書館で借りてみた。 豊田正子氏の「綴方」の授業の成果を本にまとめたもののようだ。 拙い文章だったのが、みるみる長さが伸びて行き、表現が豊かになってゆく。 事実の羅列だったと…

アノニマスケイプ こんにちは二十世紀/細川文昌

とても静かで恐ろしい本だと思った。 行旅死亡人とは、行き倒れて亡くなった方である。 明治32年に公布された「行旅病人及行旅死亡人取扱法」によって、手続等が定められている。 市区町村や公共団体が救護し、亡くなられた際は埋葬し、その費用を家族等に請…

最暗黒の東京/松原岩五郎

ちょっと気になっていたので図書館で借りてみた。 明治時代の東京の貧民窟、つまりスラム街に入り込んでルポルタージュした本である。 当時の三大貧民窟が、下谷万年町(今の上野駅から鶯谷に向かった東側の一角)、四ツ谷鮫ヶ橋(信濃町と四ツ谷の間、赤坂…

ソングライン/ブルース・チャトウィン

何となくチャトウィンが気になったので、図書館で借りてみた。 とても不思議な本だ。 ノンフィクションのようなのだが、フィクションのようでもあり、ある種の哲学書のようなものにも思える。 アボリジニたちの土地と移動と歌に始まり、人類進化の過程におけ…

気違い部落周游紀行/きだみのる

あざといタイトルではある。 内容は、第二次世界大戦の前後に、東京の西の外れの山村の寺に住み着き、その村の人々の姿を描いた、民俗学的な内容だ。 何故このようなタイトルなのか、何を意図しているのかは、著者自身が丁寧に解説している。 幾分、戯画的に…

和英対照仏教聖典 / The Teaching of Buddha

こういう記事を書くと、誤解されそうだなとは思うが、誤解をされたところで何の毒にも薬にもならないから書いてしまおうかと思う。 旅行先のホテルにある聖書と仏教聖典は、つい読んでしまう。 基本的には宗教的な素質や素養が無いのだが、それでもぱらぱら…

夢酔独言 他/勝小吉

勝小吉は、勝海舟の親父。 42歳で今までの半生を振り返って、こんな人生送るなよ、と戒めとして書いたもの。 なので、ありがたみも無く、説教臭いのだって嘘臭い。 奔放に好き勝手生きてきて、いまさらそれは無いんじゃないの、と言いたくもなる。 だが、そ…

どうして僕はこんなところに/ブルース・チャトウィン

以前にも読んだのだけれど、もう一度読んでみようかと思い立ち、そういえば角川文庫に入ったよなと思い出して探してみた。 しかしそう思っても、そう簡単には手に入らない。 時々思うのだけれど、気になった本は、気になった時に、買ってしまった方が良いと…

十六夜日記/阿佛尼

旅行中に読んでみた。 阿佛尼が京都から鎌倉に至る「道の記」、鎌倉滞在中の京都との遣り取りの「東日記」、そして「長歌」から成っている。 併せて、「阿佛仮名諷誦」「阿佛東くだり」が収められている。 結構、急ぎ足の旅のようで、夜に泊まるところが云々…

西東三鬼集/西東三鬼

西東三鬼は昭和初期の俳人である。 と言っても良く知らない。 なぜこの本に辿り着いたのかも覚えていない。 そもそも俳句だって語れるほどに知らないのだけれど、西東三鬼の句はモダニズムだと思った。 この場合のモダニズムとは、内容に先行するスタイルが…

ルイ・ボナパルトのブリュメール十八日/カール・マルクス

いまさらマルクスだと?フランス革命だと?お前はどこぞの左翼気取りの学生か、と、アナクロニズムの甚だしいのにも程があるぞ、と、いまどき赤旗の勧誘員だってこんな本は手に取らないんじゃないか、と。 とは言え、以前から何か惹かれるものがあるので買っ…

百人一首/藤原定家 撰

平行で何冊か読んでいたうちの一冊。 今ひとつ響かず。 何でだろうかと考えてみると、恋を詠いこむことに、違和感を覚えている。 誤解を恐れずに、一言で言うと、キモチワルイ。 あなたのことをこんなに想っているのに何で判らないんだろうか、と詠ってしま…

郷愁の詩人 与謝蕪村/萩原朔太郎

本棚の岩波の黄帯、緑帯を整理していたら、この本が出てきた。 どうやら、この本も途中までしか読んでいなかったので、改めて読んでみる。 本のタイトルの通り、与謝蕪村を郷愁の、浪漫派詩人の先駆者として、萩原朔太郎は評価している。 それは、正岡子規か…

方丈記/鴨長明

何となく取り出して読んでみる。 鎌倉時代の古文とは言え、原文でもほんの数時間で読めてしまう。 確か高校生の時にも、日曜日に一日で読み終えたのだった。 いまさら内容や作者について書く必要も無いだろう。 作者が60歳の頃に書いたようだ。 果たして自分…

江戸アルキ帖/杉浦日向子

ふと、杉浦日向子女史の江戸モノが読み返したくなった。 自分の中での江戸ブームが続いているのかもしれない。 タイムトラベルして、江戸の街を散策し、そのスケッチと文章をまとめた、という体裁の本である。 一口に江戸時代といっても、200年もあるわけだ…

雨月物語/上田秋成

今更ながらに、上田秋成を読んでみる。 開いたら、栞が途中に挟まっていたので、おそらく読み通していない。 現代語訳付なのだけれど、そこはやはり原文で読む。 が、古文の時間はあまり身が入らなかったので、所々、判らなくなる。 こういう時は、現代語訳…

イコノソフィア/中沢新一

「イコノソフィア」で検索したら、自殺したくなる曲という都市伝説があるらしいが、この本とは関係が無い。 1980年代後半の中沢新一氏は、ニューアカデミズムや新人類というレッテルを貼られたポップスターだったのを思い出す。 それが良かったのか悪かった…

背景の記憶/吉本隆明

ふと、吉本隆明氏の歯切れの良い文章に触れたくなる。 この本は、吉本氏が過去について触れた、雑多な文章を集めている。 あとがきによると、担当者の小川哲生氏の編集力も素晴らしいようだ。 吉本氏自身でも語っているように、ある種の自伝のようでもあり、…

日本の名随筆27 墨/篠田桃紅 編

様々な人の文章をテーマに沿って集めた「日本の名随筆」シリーズである。 久しぶりに読み返してみた。 実際のところ、名文、美文ばかりとは言えない気がするが、だからと言って微に入り細に入り論うつもりも無い。 墨と言いつつ、書に言及している文章も多い…

漢和辞典が欲しい

家にある漢和辞典は、三省堂の「新漢和中辞典」なのだが、最近、これが使いづらいように感じている。 もう何十年と使っていて、いまさらなのだけれど、字を引き難いように思う。 学生の頃は、何とも思っていなかったのに、最近そう感じるのは、字典の部首索…

光車よ、まわれ!/天沢退二郎

しばらくぶりに読み返して、やはり素晴らしいと思った。 この本は、詩人の天沢退二郎氏によるジュブナイルである。 もしかすると、ジュブナイルが好きなのかもしれない。 主人公に超人的な能力があるわけでもないのだけれど、突然、世界が変質するところから…

言葉からの触手/吉本隆明

1989年の吉本隆明氏の作品。 評論のようでもあり、詩のようでもある。 時事的な話題を取り上げつつも、まるで観念論のようにも見える。 言葉と身体を重ね合わせ、身体の喩で思考する。 むしろ、観念を身体に向かって開いてゆくことで、新たな思考のありよう…

妖怪談義/柳田國男

かつてこの本は、水木しげる氏の「妖怪なんでも入門」に次ぐ、妖怪本の古典だったのだけれど、読み通していなかったようだ。 (その頃は、小松和彦氏の著作も、井上円了の名前も知らなかったのだった。) 改めて再読してみる。 柳田國男氏のこの本は、代表作…

忘れられた日本人/宮本常一

この本もまた、忘れられなくて買い直した本である。 集められた話の真偽を云々するつもりも無い。 語りの妙は、宮本常一氏の編集力が素晴らしいのだと思う。 改めて読み返してみると、取り止めも無く語られた話を、再構成したのだろう。 そこには、宮本氏自…

ヴォネガット、大いに語る/カート・ヴォネガット

ヴォネガットのエッセイを読むのは、これが初めてだ。 いつ買ったのかももう覚えていない。 様々なエッセイやら講演録やら含まれているが、小説と変わらない、いつものヴォネガット節とも言える。 その中でも特に、ビアフラに関するエッセイは、白眉だ。 (…